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愛知産業大学通信教育部 山口雅英のブログ

カテゴリー : 関係を視る の記事

とにかく「視る」こと

このところずっと「視る」というテーマで書いてきた。

とにかく「視る」ことをおろそかにして良い作品を描くことなどできない。このことはどれだけ強調してもし過ぎではない。初学者のみなさん肝に銘じてほしい。例え手先が器用に動かせたとしても、その器用さを持って何をどのように描かせるのかを決めるのは心であり、そのように心が何かを決められるのも「視る」ことを通じ様々に感じ、考えているからこそ。まず「視る」、そして心が作られる、動く。

「何を描こうか」を決めることは「何が視たいのか」を明確にすることに他ならない。 「どんな料理を作ろうか」を決めることは「何を食べたいのか」を明確にすることに他ならない。料理と全く同じである。

人間の学習活動の約八割は視覚に依存している、と言われる。学習に限らず人日常生活の中で視覚は日夜大変な量の情報を処理している。「いちいち味わってい たら追いつかない」、視覚はそういう状況にある。そんな視覚を通じて何かを味わうことができるようになるためには、それなりの練習が必要となる。本来味わ う能力を持っているのに活用されないから弱くなってしまった、それを復活させるリハビリと言っても良いだろう。では具体的にどのリハビリはどのようにした らよいのか。
初学者においては、「上手に描きたい」というようなことは漠然とした意識はあるものの、「どのような絵を描きたいのか」というはっきりしたイメージ を持っていないことが往々にしてある。これは、例えるなら「何を食べたいのかわからないが、とりあえず何かを上手に料理はしてみたい」というような方向性のまったく定まらない状態である。自分がどんな料理を作ることで何を味わいたいか、このことをはっきり見据えるためには、とにかく美味しいと思うものをどんどん食べてみること。理屈など抜きで良い、美味しいと思って鑑賞できる作品をどんどん「視る」こと。どんどん「視る」ことを通じて自身のテイストを養うことだ。

関係を視る5

「視覚的に捉える関係」と「知覚的に捉える関係」。いずれにせよ、漠然と視ているだけでは絵は描けない。3次元の世界を2次元に再現できるように観察する、という特別な捉え方、意識。デッサンで培われる力は多岐に亘る、その一つ、世界を、2次元の中の多様な関係として翻訳し表現する視方、感じ方、考え方。これは再現的表現のみならず、非再現的絵画、幻想絵画、抽象絵画等あらゆる絵画表現の根底を為すもの。

2次元の造形世界での表現における演出の仕方を学ぶ、と言っても良いかもしれない。 登場人物だけではドラマにならない。登場人物が様々な状況で様々に関係することによりドラマは動きはじめる。表現となる。絵画も同じ。ただ対象をそっくりに上手に描ける、それだけでは表現にならない。何とのどんな関係の中で描くか。極論すれば、関係こそが表現である。音楽には音楽の、ダンスにはダンスの、小説には小説の、料理には料理の、あらゆる表現にはその表現媒体に応じた関係の表現の仕方がある。その力を付けてこその絵画表現である。

再現的絵画、非再現的絵画、いずれの制作においても単に「自分はこんなモノを描いた」だけでなく、「こんな関係を描いた」と語れるような意識で制作してみてほしい。

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横から視た顔と正面から視た顔がない交ぜになった人物像。といえばピカソである。人間の顔は正面から描くよりも横顔のほうが描き易い部分がある、例えば鼻の立体感を正面から描くのはともて難しいが横顔なら輪郭で表現できる。額から鼻、口、顎にかけての全体的な起伏も同様。反対に眼や口などは正面からのほうがわかりやすく描くことができる。人物に限らず、いろいろなモノにはそのモノらしさを表現しやすい方向というものがある。人間の頭の中の世界像を知ることはできないが、想像するにそのようにそのモノであるということがわかりやすいイメージで組み込まれているのではないだろうか(それほど単純なものでもないとは思うが)。観念的なイメージ。「眼を描いてください」と言うと恐らくほとんどの人が紡錘形(葉っぱのカタチ)の中央に○、というおなじみのものを描くだろ。そんな感じで世界のあらゆるものが頭の中に組み込まれいている。

ならそのように表現するほうが人間にとって自然ではないか(これも、それほど単純なものではないと思うが)というのが前述のようなピカソの絵なのだ。視覚的に関係を視るのではなく、知覚的に関係を捉える。「視ているものを描く絵」から「知っているものを描く絵」へ。「視覚的に捉える関係」から「知覚的に捉える関係へ」。美術が主観的なもの(判りにくいもの)へとなっていくひとつの契機である。

 
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